60歳代になると毛細血管が3割も減少する
香辛料のシナモンは、昔から「桂皮」として、漢方薬にも使われてきました。そして、近年の研究によって、シナモンの持つさまざまな健康効果が判明しつつあります。例えば、シナモンには、血糖値を下げる効果があることがわかり、糖尿病のかたにお勧めの食品であることがわかってきています。
そして、皮膚の毛細血管の老化防止のために、シナモンが役立つことを突き止めました。皮膚の毛細血管は、肌自身の美しさや若さを保つのにも重要な働きをしていますから、皮膚の毛細血管の老化防止ができれば、それはすなわち、肌の老化防止につながるというわけです。
また、頭皮に限っていえば、老化によって生じてくる抜け毛などをシナモツが予防し、頭髪の維持に役立つ可能性もあることがわかってきました。
そこで今回は、シナモンの皮膚の毛細血管に対するアンチエイジング(抗老化)効果を中心に、紹介したいと思います。
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年を取るにつれて、皮膚の毛細血管が減少することは、以前から知られていました。若いときに比べて、60~70歳代になると、30% も、毛細血管がへってしまうのです。では、老化の始まった毛細血管では、どんなことが起こっているのでしょうか。
その説明をするためには、最初に、血管の構造についてふれておきましょう。血管は、血管内皮細胞と、それを覆う壁細胞の二層構造になっています。この二層構造がきちんと維持されていれば、毛細血管から必要な量の栄養分が染み出て、皮膚の隅々まで届けられます。
ところが、年を取るにつれ、この二層構造に変化が現れます。40代後半以降になると、血管内皮細胞と壁細胞との、この二層の接着がはがれやすくなるのです。
そして、この二層構造が維持できずに、壁細胞がはがれると、血管から老廃物などがもれ出してしまいます。
それが、皮膚のシミや、むくみなどの原因となるのです。この血管内皮細胞と壁細胞の二層構造を、維持するのに重要な働きをしているものが、血管内皮細胞にある「Tie2」と呼ばれる受容体です。
この受容体が活性化されていると、血管内皮細胞と壁細胞がよく接着し、栄養分などが皮膚の隅々まで送り届けられることになります。
シミが薄くなりむくみも解消
加齢とともに、このTie2の活性が、落ちていくことがわかっていました。私たちは、このTie2 の活性を、上げる成分がないかどうか調べました。そして、多くの天然由来成分をチェックした結果、見つけたものが、シナモンだったのです。シナモンは、Tie2の活性を上げることによって、いったんはがれてしまった血管内皮細胞と壁細胞とを、再び接着する働きもしてくれます。これにより、もれやすくなっていた血管も修復されることになります。
そして、それが皮膚のシミやむくみなどを、改善することにもつながってくるのです。いい換えれば、シナモンは、血管の構造を安定させ、美肌効果や、アンチエイジングの効果をもたらすといってよいでしょう。
十数人のかたにシナモンを服用してもらって行った臨床実験では、実際、皮膚のシミが薄くなり、むくみも改善したという報告がなされています。
それでは実際に、このような美肌効果やアンチエイジング効果を上げるためには、1日にどれくらいの量のシナモンを、摂取すればいいのでしょうか。
私たちの実験結果から類推すると、シナモンパウダーで1日0.6mgとるといいと考えられます。そして、皮膚の毛細血管に対する、シナモンのこうした効果は、理論的には、頭皮についても当てはめることができると考えられます。
当然のことながら、頭皮にも多数の毛細血管が存在します。「毛根」と呼ばれる髪の根もとや「毛包」という鞘状の部分で覆われています。この毛包は、毛根部を保護するとともに、毛の成長に関しても重要な働きを担っています。
ことに毛包には、毛細血管が非常にたくさん集まっています。加齢によって、この毛細血管の老化が進めば、毛細血管自体の数もへっていきますし、先ほど述べたのと同様の現象が起こります。
つまり、血管内皮細胞七壁細胞の接着がはがれ、毛細血管の機能低下が起こり、毛根へも栄養分がじゅうぶんに送られなくなります。その影響を受けて、毛が抜けやすくなるなどの老化現象が起こってくると予想されます。
そこで、シナモンを適量摂取して、毛細血管の機能低下を防ぐことができれば、毛細血管自体の数をへらすことも予防できますし、毛根部への栄養供給もじゅうぶんになされるようになるでしょう。
この結果として、抜け毛などの予防・改善効果も期待できると考えられるわけです。ただし、シナモシは、過剰に摂取すると、肝障害を起こす危険性がありますから、とりすぎは禁物です。目安としては、1日10mg以上はとらないようにしてください。